小売業の一つに「雑貨屋」でのお仕事があります。可愛くてオシャレなインテリアを飾る……そんなイメージがあるため、特に女性は就職や転職の候補としても挙げている人も多いのではないでしょうか。
そこで本日は、雑貨屋の店長の仕事内容に関して、リアルな仕事内容を詳しくご説明していきたいと思います。
この記事の信憑性は下記のとおり。
- 正社員としてチーフで3年、店舗異動後、店長に昇格して1年ほど雑貨店に勤務。
- 社員一人という状況も多く、エリアマネージャーとパートさんの間に立つ中間管理的な扱いに悪戦苦闘、右も左もわからないままとりあえず頑張る。
- 独学で人材マネジメントなどを学び、2020年1月の年始セールで750万円の店舗売上を達成。会社創設以来、全国一位の成績を残す。
みたいな流れで、実際店長として働いていました。決して良い店長ではありませんでしたが、売上的には結果を残して辞められた店長です。
それでは順番に、雑貨屋店長の仕事内容を解説していきます。
【元店長】雑貨屋店長の仕事内容を公開!転職前に知っておきたいこと
雑貨屋店長のすることは至ってシンプルで、「スタッフのマネジメントと教育」です。
表向きには、店の売上を上げる、店のブランドイメージをアップさせるとか言いますが、実際スタッフの管理なくして、いずれも達成はできないでしょう。
なぜなら、モチベーションの低いスタッフがいると売場環境も悪くなり売上は下がりますし、スタッフの質が悪いとお客様からクレームが入ってブランドの信頼がガタ落ちするからです。店長一人でできることはしれていて、全てはスタッフさんありきなんですね。
雑貨屋の店長の仕事内容は、全て「スタッフのマネジメントと教育」につながっていると言っても過言ではありません。
具体的な店長の仕事内容は主に10個
もちろん、雑貨屋の店長は人のマネジメントに付随して多くの仕事内容があります。
大きく分けて、以下のような仕事内容が挙げられるでしょう。
- 売場計画の立案・実施
- 売上の管理(売上、PL管理や予算設定など)
- 商品部との連携
- 上司への報告書(週報・月報)などの作成
- パート・アルバイトスタッフの採用
- パート・アルバイトスタッフの教育
- シフト管理
- 棚卸のロス調査及び報告
- 事務所との連携
- 接客・レジ・商品整理・品出しなど
企業のコンセプトや店舗規模などによって異なるかもしれませんが、私が店長のときは、上記の仕事をルーチンワークとして回していました。
では、順を追って雑貨屋店長の仕事内容を解説していきましょう。
【仕事内容その1】売場計画の立案・実施
雑貨屋の店長が任される仕事内容のひとつが、売場計画です。
店舗によって坪売や客層が違うので、その店に合った売上の取れる売場をつくらなければならないというミッションがあります。
例えば、夏の催事をつくるときは5月、6月の段階で、入ってくる商品をどこに陳列するかということをレイアウトにしっかりと落とし込みます。落とし込んだ後は、上司(ここではエリアマネージャーにします)に報告、ダメ出しを受けて再度修正という流れです。
入荷したものを順番に並べるだけではなく、客層やシーズンごとのタイミングに合わせて店の一番表には何を置くのか、通路の奥には何を置くのかといったことを考えなくてはいけないので、ひたすら頭を使います。
「今、流行りのアイテムだし前に出しときゃ売れるか…」は店長になると通用しません。昨年の売上や商品ごとの買上点数などを分析し、数値に基づいた売場計画を練らなければならないという大変さがあります。
【仕事内容その2】数字の管理(売上、PL管理や予算設定など)
雑貨屋の店長は、数字の管理も仕事内容に含まれます。まず、出勤してすぐに自店・他店の売上を確認します。
私が勤めていたところでは1時間ごとに売上のデータが取れたので、勤務中何度も確認をするようにしていました。
売上を見ながら、「他店では売れているのに自分の店では全然売れない…」「先週売れていたのに今週はガクンと売上が下がっている…」といったものは早急に売場修正に入ります。
また、店の維持費などを表すPL数値も時々チェックします。
PLとは損益計算書といい、営業利益のほか販売費などの諸経費が算出された書類のことです。優秀な店長は、これを見て無駄な費用が発生していないかなどを隈なくチェックします。
特に人件費などは、「あとどれだけ店でスタッフを採用できるか」がわかる指標になるため、定期的にチェックする必要があります。
また、雑貨屋によっては、予算を店で決めるところがあります。小売業で用いられる「予算」は目標利益のことです。
予算の日割り計算をして、「私の店舗は今月これだけの売上を出します」とエリアマネージャーに報告し、問題があれば修正を行います。
【仕事内容その3】商品部との連携
雑貨屋の店長は商品部と連携をして店舗運営に当たります。商品部は本社に在中するのが通常でしょう。
商品部もデータである程度は、店ごとの売れ筋などを把握していますが、現場にいるのは店長です。しっかり商品部と連携を取っておかないと、店にとって必要のない商品が大量に入ってきて陳列場所がなくなり、在庫となってしまうパターンもあります。
と腐りたい気持ちはありますが、そこでしっかりコミュニケーションを取って、温度差や溝を埋めるのも店長の仕事内容なんです。
また、欲しい商品は要望を上げて取り寄せてもらったり、不要なものは要らないとはっきり伝えることも重要です。商品部も売上を出してくれるなら、断ろうが文句言われようが平気なんですよ。
【仕事内容その4】上司への報告書(週報・月報)などの作成
店長はデスクワークも大切な仕事内容の一つです。主に週報・月報といった上司への報告書です。
週報は、「何が売れたか、何を反省して来週に生かすか」を毎週記録するもので、月報は、「昨年と比べてことしはどういうトレンドがあったか、何が売れたか、その時の客層はどうだったか」などを記録するものです。
週報は週一、月報は月一で上司にメールで提出します。
「もし店長やスタッフが入れ替わったときのためにわかるデータを作成する」という目的があって作成するものですが、日々のイレギュラー対応に追われる雑貨屋の店長は、なかなかここまで書けないのが実情です。
【仕事内容その5】パート・アルバイトスタッフの採用
雑貨屋店長の仕事内容で、非常に重要なことは人のマネジメントと教育」と言いましたが、パート・アルバイトスタッフの採用はまさにこれに直結します。
応募が来たら面接日時を設定し、実際に面接を行って合否を決定します。これは店長の裁量でできるので、自分が働いて欲しいと思えるようなスタッフを入れることができます。
しかしながら、面接印象が良くていざ入社させたら非常に手がかかるスタッフだったということもよくあります。そうなれば教育で良いスタッフに変えていくしかありません。
ですので、雑貨屋の店長は、そのときの印象だけでなく、「長く働いてくれるか」「ほかのスタッフと上手くやっていけるか」と様々な視点で、その人を見ることが求められます。
また、店長は健康保険や雇用保険など社会保険に関することを、入社するスタッフに説明してあげなくてはなりません。そのため、ある程度は人事的・総務的な知識も必要です。
【仕事内容その6】パート・アルバイトスタッフの教育
入社したあとのパート・アルバイトスタッフの教育も欠かせません。店舗には人事担当がいないことがほとんどなので、多くの場合は店長が率先して教育を行います。
そのため、店長はレジの使い方からごみ捨ての場所まで、細かいことも含めて全て網羅しておく必要があります。
「店長なのにわからないことがあるなんて…」と思われたら終わりです。その時点で信用がガタ落ちする恐ろしい世界です。
また、仕事を振ってフィードバックを行うことも店長の仕事です。
また、「決済にPayPayが加わった」「レジ袋が有料になった」といった仕様の変更があった際は、スタッフ全員にいきわたるように、それぞれのタイムスケジュールを把握して、段取りよく教育を進めて行かなければなりません。
【仕事内容その7】シフト管理
雑貨屋に限った話ではありませんが、店長と言えばシフト管理も仕事内容のひとつです。
スタッフが少なければ自分が入らなければいけませんし、逆に多ければ全員が均等に不平等なく振り分けをしなければいけないという大変さがあります。
全員が全ての曜日、時間帯に対応できるわけではなくスタッフごとに細かい勤務条件があるので、その確認も必要です。
「あの人は、朝番ばっかり…」「私だけ異常に勤務時間が長い(短い)」も不満もちらほら。シフト管理はフラットに!均等に!するのが大変なのです。
あまりに入っていないアルバイトなどがいれば、履歴書を確認したりして「この条件で君を採用したのだけど…」と追及することがありました。
【仕事内容その8】棚卸のロス調査及び報告
会社によっても異なりますが、半期に一度棚卸が実施されます。店の商品を数えて、在庫金額が正しいかどうかをチェックする仕事です。万引きや数え間違えで起きた誤差は、ロスと言います。外部に棚卸をお願いするケースと、自店で行うケースがありますが、私の場合はストッカーなど一部を事前に数えておくというルールでした。これは企業によって変わります。
棚卸業務は、実は当日よりも前後が大変です。
【棚卸前】
・ストッカーやレジ回り、売場全体の商品整理
・棚卸をしたことがないスタッフへの教育
・棚卸前と後の帳簿や請求書の仕分け、整理
【棚卸後】
・実際のロス結果を受けて、再度売場をチェックし誤差を修正する
・修正依頼の書類を作成(ロスがひどいときは始末書など)
棚卸当日、店長は夜から翌日の朝まで棚卸業者の監査人と立ち会うだけなので、眠気さえ頑張ればそこまでハードではありません。
他店で棚卸がある日は、監査役で出張することなどがありました。全国の店舗に経費で出張できるので、人によっては良い息抜きになるかもしれませんね。
【仕事内容その9】事務所との連携
大型商業施設のいちテナントとして店が入っている場合は、運営する事務所との関係づくりも大切な仕事内容です。
「あの店長、愛想が悪いな」と思われたら本社にクレームが入って大変なことに…とかもよくある話です。
「この館を盛り上げるためにこういう企画をしたいんです!!」ぐらいに積極的な姿勢を見せることができる店長は、事務所の人に良い心象を与えられます。
【仕事内容その10】接客・レジ・商品整理・品出しなど
店長は、アルバイトスタッフと同じようにレジや品出しなども毎日のように行います。店長だからといって椅子にふんぞり返るようなことはできません。そんな店長もたまにいますけど。
アルバイトがすることも含めて全てを一通りこなせる店長は、部下からも信頼のおける店長として尊敬されるので、デキる店長ほど積極的にこういった雑務はこなしている印象です。
特にレジが混んできたときなど、すぐさまヘルプに入れる店長ってイメージするだけでも頼りになりますよね。
その他、雑貨屋店長の仕事内容にはイレギュラーな対応が…
ちなみに雑貨屋の店長は下記のようなイレギュラーな対応が発生することがあります。
- スタッフから突然の「辞めます」相談
- 万引き対応
- クレーム対応
- 突然の辞令
「きょうはこの計画で進めていこう」という想い通りにいかないのは、小売業の宿命かもしれません。店長にはどんな状況でも対応できる柔軟性が求められます。
スタッフからの突然の「辞めます」相談
店長をやっていて、ほぼ確実に訪れるであろう仕事内容の一つが、突然のスタッフからの「辞めたいんですけど」の相談です。
相談を受けたら、作業の手を止めてしっかりと向き合って面談の時間を設けます。
辞めるという人の意思は固まっていることが多く、よほどの説得術と信頼関係が構築できていないと引き留めることは難しいです。そのため、店長の腕が試されるものでもあります。
万引き対応
商品が万引きされたときの対応もある意味で仕事内容に入ります。雑貨屋の店長は万引き対応もしっかりこなさなければなりません。
とくに大量盗難があった場合は、警察へ被害届を出すだけでなく、会社に始末書や損益修正票などを提出しました。
- クレームが発覚する
- 監視カメラで状況を追跡する
- 報告書の作成、被害届の準備
- 警察で被害届を提出
という一連の流れが発生します。
一つの万引きでおよそ6時間くらいの時間を費やします。万引きするほうが悪ですが、店長の管理能力が問われたりして、やるせない気持ちになることも多々あります。
クレーム対応
雑貨屋の店長をしていると、月に一度くらいのペースでクレームが発生します。
クレームといっても、「品ぞろえが悪い」や「スタッフの態度が悪い」など軽いものから、「ラッピングに値段がついていた」「店側のミスでお客様が怪我をした」という誠心誠意謝罪しなければいけないものまで、その種類は様々です。
雑貨屋でよく起こるクレームは下記のものです。
- 見本を見て買ったのに、全然違うものが入っていた。
- プレゼント用に買った商品が壊れていた。もう間に合わない。
- そちらで商品を買ったがインクが出なかった。遠方なので返品に行けない。
店側の対応策としては、実際にお客様の家の前まで商品を届けにいったり、遠方のお客様に対してはこちらから着払いで郵送して、不良品をこちらに送ってもらったりします。特にプレゼントに関する過失は特に注意しないといけません。
クレーム処理も個々の状況や環境に合わせて動く必要があるので大変でした。
雑貨屋はお客様があってこそです。どんな状況でもこちらに不備があれば、最優先で動かないといけません。
突然の辞令
「来月から〇〇店に行ってね」
全国展開の雑貨店で仕事をすると、突然辞令はやってきます。これからも店を盛り上げていくぞという意気込みでいると不意打ちを食らって、戸惑うことがあります。
辞令を受けたあとは、後任への引継ぎ、事務所など各所への挨拶回りに追われます。
新しい店で、再度人間関係を築いていかないといけないので大変です。しかし、人との出会いが楽しい人にとっては新鮮な気持ちで仕事をすることができますね。
これがあれば大丈夫!雑貨屋の店長に向いている人は?
これらの仕事内容を見ていただければ、なかなかの仕事量だとお分かりいただけたと思います。
激務とも言える雑貨屋店長、向いている人はずばり下記のような人でしょう。
- 引継ぎがしっかりできる人
- マルチタスクができる人
- コミュニケーション能力のある人
- とにかく雑貨が好きな人
引継ぎがしっかりできる人
引継ぎは意外と重要、というかかなり重要です。
自分しかわかっていない事柄は必ず、次の責任者へとノートなりメールなりで引き継がなければなりません。伝えるのが難しい、引継ぎする時間がないときなどは、翌日電話で引継ぎなどをしていました。
メラビアンの法則によれば、言語情報で伝えられるのは本質7%という低い数値らしいです。だからこそ引継ぎというのは難しいものだと言えます。
参考:明日の人事Online「メラビアンの法則とは?第一印象が大切?誤解せずに理解してビジネス・接客・恋愛に役立てよう」
後で仕事をやる人が不自由なくその日働けるよう、翌日のことまで気を回すのが店長の仕事内容の一つであり、店長に求められる資質でもあるのです。
マルチタスクができる人
黙々とやるほうが好きだ、という人はあまり向いていないでしょう。
常に売場の状況は変わっていくため、一つのことに集中しすぎる人は店長として苦労します。
逆に言えば、Todoを毎日書き効率良く同時並行させていく。そこに達成感を覚えられる人は雑貨屋の店長ができます。
コミュニケーション能力のある人
コミュニケーションが取れない人にとって、雑貨屋の店長はかなりつらい仕事です。逆に、人と話をするのが好き、相手を気遣える、空気が読める人は店長として部下から信頼されます。
ぶっちゃけると、仕事ができない、わからないことが多い店長でもいいんです。明るく元気に皆を引っ張っていけるような店長であれば、スタッフはサポートしようと動いてくれるのですから。
毎日大きな声で接客をし、スタッフとも明るく接することができるということが大切です。
とにかく雑貨が好き
当然ですが雑貨が好きな人こそ雑貨屋の店長に向いています。
文具、コスメ、服飾など総合的に雑貨を扱っているところでも自分の好きな分野が一つでもあれば、日々のモチベーションアップになるでしょう。
「自分が好きな商品を店で売る」というのは、雑貨屋の店長をやる上でこの上ないやりがいでしょう。
異動全然OKな人
異動に抵抗のない人や色んな場所で働きたいという人は向いています。
自分の好きな地域でずっと働きたい…という人は全国規模の雑貨店で働くのは難しいかもしれません。
雑貨屋の場合、全国展開する店舗で正社員をすれば転勤は当たり前のようにあります。もしそれでも地域で働きたいという人は、地域限定社員制度のある会社を選ぶことがおすすめです。
雑貨屋の店長は、仕事内容が多いがゆえにやりがいもありますよ
今回は、店長として1年半働いた私が、実際にやってきた仕事内容を生の声として文章でお届けしました。
雑貨屋の店長は、常にマルチタスクで、幅広く同時に紹介してきた仕事内容をこなす必要があるので本当に大変です。しかしながら、毎日のように売場や人間関係は変わっていくので、その日々変化する日々にやりがいを感じられる点で魅力ある仕事とも言えるでしょう。
逆に言えば、本日ご紹介した仕事内容を見て、「なんだ、これぐらいならできそう」と思える人であれば長く働くことができるでしょう。実際に毎日大変でも充実した雑貨屋ライフを送っている社員さんは大勢います。
また、最新のアイテムや雑貨と触れ合えるので、人とコミュニケーションを取るのが大好き、雑貨が好きなら間違いなく楽しめます。
小売業に転職したい、雑貨屋の店長をやってみたいという人の参考になれば幸いです。